溶接方法について一般的に広く使われている方法をいくつか簡単に説明したいと思いますので参考にしてください。
1.ガス溶接について
ガスが燃焼する時に発生する高温を利用して材料を溶かし、接合する方法です。
使用する可燃ガスは、アセチレン・プロパン・エチレン・水素・都市ガス等があり
一般的に実用されているのはアセチレンガスで、酸素ガスと混合させて溶接する方法です。
酸素・アセチレン溶接の場合、温度は約 3,000~3,500℃となり各種ガスの中で温度は最も
高温となります。また、酸素・プロパンや酸素・都市ガスの溶接も行われています。
長所 溶接トーチやガスホースの設備が簡単に用意出来、電源が必要ないため
ガスボンベが有れば屋外等、何処でも作業が出来ます。
短所 アーク溶接に比べて、炎の温度が低い為熱影響部の範囲が広くなる事と0.5~6mm程度の
薄板溶接には 向いていますが、厚板を溶かすことが出来ません。
注意 ガス溶接作業を行う者は「ガス溶接技能講習規程」の講習を終了しなければなりません。
2.被覆アーク溶接について
一般的に最も広く行われている被覆アーク溶接棒で溶接する方法です。手溶接・手棒溶接とも
言います。使用する溶接機は交流アーク溶接機・直流アーク溶接機・バッテリー溶接機・エンジン
溶接機 等があります。 ホルダーにはさんだ溶接棒を母材にあてると溶接アークが発生し母材を
溶かして接合させます。この溶接の温度は約 5,000~6000℃の高温になります。
溶接中はスパッタが発生し後処理が必要となります。溶接後にはビード上にスラグが残りますが
ハンマー等で少し叩けば剥離します。
一般的な棒の直径サイズは 2.0 2.6 3.2 4.0 5.0 mm 程度で、種類は鉄、ステンレス、
鋳物、高張力鋼、硬化肉盛、等があります。
長所 設備があればある程度、溶接が簡単です。風に強く屋外での作業に向いています。
短所 被覆材(フラックス)は湿気・水分に弱く、吸湿したまま溶接するとブローホール等の欠陥が
出やすくなります。
3.TIG溶接について
TIG溶接(Tungsten Inert Gas 溶接)は 母材とタングステン電極の間にアークを発生させ
トーチ先端のノズルから不活性ガスを流し、溶接部の酸化、窒化を防ぎながら溶接する方法です。
シールドガスはアルゴンガスが一般的に使われています。なぜアルゴンガスなのかは、高温に
なっても他の元素とは全く反応しない安定したガスだからです。
溶接機は専用のTIG溶接機を使いますが、大きく分けて、直流TIG溶接機・100V200V兼用直流
TIG溶接機・交流直流兼用TIG溶接機があります。
100Vの交流TIG溶接機というのは存在しません。
アルミを溶接する場合は交流TIG溶接となります。その他、鉄、SUS、低合金鋼、
マグネシウム、ニッケル、銅、チタン等の合金も溶接できます。
長所 各種金属の薄板、精密部品の溶接が可能です。(熟練が必要)スパッタが発生しません。
ヒュームが少ない。溶接部の仕上がりが非常に美しい。
短所 シールドガスは風に弱く屋外の作業には向いていません。TIG溶接機が高価です。
4.CO2/MAG溶接について
溶接ワイヤをモーターの付いた送給装置で自動的に送り出し溶接トーチを人が手動で操作して
溶接する方法です。シールドガスは 炭酸ガス、炭酸・アルゴン混合ガスを使用します。
前者の場合 炭酸ガス溶接、CO2溶接と言い、後者をMAG溶接(Metal Active Gas溶接)と
呼びます。溶接機は専用の半自動溶接機を使用します。
現在販売されている溶接機はCO2/MAG兼用の溶接機が多く販売されています。
溶接ワイヤは 鉄、SUS、等多種類販売されています。鉄、SUS用に関しては高能率の
フラックス入りワイヤも販売されています。鉄工所では必ず必要な溶接機です。
長所 溶接スピードが手棒より約3倍程度早いため高能率で作業が出来ます。手棒と比べて
溶着金属量が多いため材料が節約できます。 薄板から厚板まで溶接可能です。
短所 シールドガスは風に弱いため屋外作業には向いていません。
5.MIG溶接について
MIG溶接(Metal Inert Gas溶接)は上記で説明したCO2/MAG溶接とほぼ同じ原理の溶接法ですが、
シールドガスはアルゴンガス等を使用します。
用途はアルミ・アルミ合金、ニッケル・ニッケル合金、銅、銅合金、SUS 等です。
アルミやチタンはシールドガスに純アルゴンガスを使用しますが、軟鋼、高張力鋼や低合金鋼などのフェライト系の鋼材や
オーステナイト系ステンレス鋼材に対しては、アルゴンに約 2パーセントの酸素、又はアルゴンに約5パーセントの炭酸ガスが
入った混合ガスを、高品質溶接のために使用します。